主催者よりご挨拶
2014年3月、弊社では「時の地層」の題下に、林秀行先生(1937年生まれ)の最新作、
本格備前焼成による「陶彫」の小品約100点による展覧会を開催し、内外から広くか
つ温かい御反響をいただきました。
その頃から、林先生には「亡父・紅村(こうそん)の遺品=遺作と自分の作品、そして
息子の作品を並列するのが夢なのだが…。」との述懐をしばしば漏らされました。
機が熟したと云うのでしょうか、弊社の展示空間にて、林家三代(紅村〜秀行〜慶一)
の作品を展観する稀有なる機会に恵まれました。
林紅村先生(本名、林守一 1906−1985、享年79歳)は美濃に生まれ、10歳時に京都
に移り、京焼の伝統焼成と中国古陶磁の研究に邁進され、とりわけ「砧青磁」と「白
高麗」、そして独自の技法=「鉄磁」を考案されて自家薬篭中のものとされました。
堅実な基本技法のもと、繊細かつ品格溢れ、細部にまでおよぶ高い完成度が目を見張
らせる、花器、香炉、御茶道具は、まさに「名人芸」の名に恥じない高品位・高品質
のもの。そして、日常食器と懐石用食器はデザインと品質、使い具合のバランスが絶
妙で上々出来、真骨頂の数々といえましょう。
林秀行先生は言うまでもなく、戦後日本〜を代表する「陶の造形作家」の巨匠ですが、
近年、特に精力を注がれる「小品」の発表で、衰えぬ創作力をご提示されてこられて
います。今回は久しぶりに「緑釉=織部技法」による小さな陶彫、良寛和尚の漢詩か
らインスピレーションを受け、熟考を積み重ねたうえでの造形を手掛けられました。
60点余の1点1点に、成熟を増した林秀行先生の造形哲学が内蔵されているものです。
林慶一先生(1964年生まれ)は、家伝の焼成技法を自家薬篭中のものとされるよう、
日々研究されています。奇をてらわない、正々堂々としたその作風は爽やかであり、
新鮮そのものといえましょう。花器と食器が彼の最高の持ち味が発揮されるとは、祖
父・紅村先生譲りといえるかも知れません。一方で、個性溢れ、同時代感覚が横溢す
る造形感覚は、厳父・秀行先生の血が流れている証なのかも知れません。今回、弊社
で慶一先生の新作を初めてご紹介する好機ともなり、悦びに堪えません。キャリア初
の「筥(はこ)」を70点、ご発表されるはこびとなりました。
林家3代の「地層」を垣間見て、ひとつのファミリーヒストリーの一端に触れられる
稀有の機会となることかと、主催者も心から楽しみにしております。ぜひ、ご来場ご
高覧下さい。
※林秀行先生の奥様、武子さまが逝去されて、はや今秋は七回忌にあたります。故人
を偲んで、武子さまがご生前に残された御自作を秀行先生が精選されて、会場に展示
することとなりました。併せてご高覧いただき、在りし日の武子さまを振り返ってい
ただければ幸甚でございます。
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2016年11月 ギャラリーこちゅうきょ
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作家の言葉
以前から、三代展をしたい、との話や、三代展はしないのか、との話をいただいてい
たのですが、祖父と父との二代展から、私を含めた三代展を、となりました。そのさ
い、ロクロ技法による陶筥をぜひ、との話で、陶箱を製作。初めての三代展を、との
運びとなりました。私自身、楽しみにしておりますが、皆様も楽しんでいただければ、
と願っております。
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林 慶一
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